経営者インタビュー詳細

株式会社ファーストリテイリング/ユニクロ
代表取締役会長兼社長 柳井 正
vol.02

http://www.fastretailing.com/jp/

柳井 正
早稲田大学卒業後、1971年ジャスコ入社。翌72年、父親の経営する小郡商事に入社。84年にカジュアルウェアの小売店「ユニクロ」第1号店を広島市に 出店。同年社長に就任。91年、社名を株式会社ファーストリテイリングに変更。現在、代表取締役会長兼CEOを務める。毎朝8時には出社する朝型人間。

経営者教育に大々的に投資したい。それが、われわれにとっての成長戦略ですから

経営者になっていい会社にしたいと思える人。そういう人が経営者に向いている人だと思います

竹内(以下T):思い起こせば、柳井社長との出会いは15年前になります。その当時から今までおつきあいしていただく中でさまざまなお話をしてきましたが、今回は、今、柳井社長が考えられている「人・組織」についてのお考えを中心に、お話をお伺いできればと思っております。
そもそも私が、柳井さんと最初にお会いした当時、今のファーストリテイリングの状況というものはイメージされていましたか?

柳井社長(以下Y):イメージできている・できていない、というよりも、こういう企業にしたいなという夢はありました。規模もそうですし、内容もそうです。ただ、まだ僕のイメージには、まったく到達していない。
そう思っています。

T:15年前に初めてお会いした時に、柳井さんとお話して、印象に残って、今でも覚えていることが二つあります。一つは、「どういう会社にしたいですか?」とお聞きした時、当時まだ200億の売上規模だったかと思うのですが(現在約6000億円)柳井社長は、「ユニクロをカジュアル衣料の分野で世界一にしたい。」とおっしゃっていました。
もう一つは、「何のために事業をしたいのか?」と質問したら、「私が言うカジュアルとは、普通の人が普段気楽に楽しめる商品のことです。その商品を日本だけでなく世界の人にも広め、少しでも世の中の人の生活を豊かにしたい。」と答えられました。
当時、私はリクルートに在籍していて、リクルート事件のあと、自分にとって、会社とは?仕事とは?と思い悩んでいた時で、世界中の多くの人の生活を豊かにするために仕事をしているという柳井社長の強い想いがひしひしと伝わりました。
そして、ユニクロを世界ブランドに、ファーストリテイリングをグローバル企業にする為にお役に立ちたいと決めました。

Y:その当時、うちの会社は地方の零細企業で、配送センターや工場のような建物が本社で、いい人を紹介してください、いい人が欲しいといってもピンとこなかったと思うんですよ。でも、僕は当時から、「いい会社にしか、いい人はこない。」そう思っていました。当時は、いい会社とはいえなかったかもしれないけれど、「いい会社にしよう!」という意識は常にありました。

T:「いい会社にしたい!」という意識を常に持たれていて、柳井さんとして一番こだわってきたこと、事業はもちろん、人とか組織について徹底して実行してきたことはどんなことですか?

Y:ほとんどの人がそうなんですが、まず、自分を基準にして考えてしまう。自分を基準に考えると、できるとかできないとかという基準で考えることになってしまいます。それがダメだと思っていて「できる、できない」ではなく「自分は何をやりたいのか」と考えるのが大切だと思うんです。僕自身がそうなんですが、自分という枠をとりはらって、自分にできるかできないかではなく「世界一になる!」と思った。僕は、ほとんどの人がそういう可能性を持っていると思うんです。
仕事とか会社というものは、凡人が自分という枠をとっぱらって夢を実現できる最適な仕組みだと思っています。
だから、僕は、ファーストリテイリングをそういう会社にしたいと思っていました。

T:たしかに、出会ったころから柳井さんは、天才や秀才に経営はできない。凡人にしかできない仕事です。とおっしゃっていましたね。

Y:頭のいい人とか、才能のある人が経営者として成功できないのは、そういうところではないかと思います。頭のいい人は、できて当たり前。自分と他の人は一緒で、自分のできることは他の人でもできるのが当たり前と思いがちです。でも、「みんなで努力してやり遂げる」それが事業経営であると私は考えています。

T:たしかにそうですね。では、10年後のユニクロ、ファーストリテイリングは、どのようになっているイメージをされていらっしゃいますか?

Y:世界中で、成長できる企業グループをつくりたいと思っています。今は日本が主ですが、少しずつグローバル化していっています。もっと大々的に進めて、日本の事業が全体の何分の一かになるようなグローバル企業になっていたいと思っています。

T:それを実現するために「ポテンシャル人材」を経営者に育成したいと思っているということですね。数年前でしょうか、その頃は経営者の育成はできないと言われていました。今になって経営者を育成したいと思われたのはどうしてですか?

Y:各企業で活躍されている方々に入社してもらい経営を担ってもらったのですが、できあがっている人なので、新しいことに挑戦するということが難しかった。自分のスタイルとか仕事に対する概念を変えていけなかった。という経験からです。
やはり、われわれが、経営を担える人を育成しなければと思いました。われわれの企業の経営を担うのは、できあがった人ではなく、ポテンシャルのある人で、短期間でできるかわからないが、できれば3年計画くらいで、経営者の入り口まで、教育して立派な経営者にしたい。
この教育に対して、大々的に投資する。それが、われわれにとっての「成長戦略」であると強く思っています。

T:柳井さんがおっしゃっている「ポテンシャル人材」の定義はなんでしょう?

Y:ちょっとくさくなるかもしれませんが、「社会貢献したい」「いいものを世の中に提供したい」と純粋に思っている人です。
そういう思いがある人でないと。自分のことだけ、自分の技術や能力を磨きたいだけ、金儲けしたいだけの人は、経営は無理だと思っています。
経営者になって、いい社会にしたいと思える人、そういう人が経営者に向いている人。そういう素質のある人がポテンシャル人材だと思っています。

T:また以前のお話になってしまいますが、15年前にアパレルなどの業界経験者や経営経験者の方々をお引き合わせしたけれど、なかなか採用まで至りませんでした。過去の経験の素晴らしさは大切な要素のひとつであるけれども、年齢とか経験とかではなくて、一生かけて何を成し遂げたいのかとか、人の喜ぶ顔が見られるような仕事がしたいとかという意識を持っている人が入社されていました。
今、まさに、またこういう人たちを採用したいと思われているのですか?

Y:そうですね。ただ、当時と違うことは、その頃、僕は、経営者と個人の生活は別個のものと考えていました。でも、今は考えが変わって、本当に会社を経営しようと思ったら、経営者と個人の生活は同一。個人の生活もかかえるのが経営の使命だと考えています。
それが、当時と今とは違うところですね。

どんな会社だって変えられる。そして変えるということは、僕自身が変わらないといけないと思っています

T:これからは、ファーストリテイリングという会社や経営者の柳井さんの真の姿について掘り下げてお聞きしたいと思います。
私は仕事柄、いろんな方にお会いしてファーストリテイリングについてお話する機会があるのですが、「できあがった会社」と思っている方が多いようです。
たとえば、20代30代の大手に勤務されている方で、その体質に不満を感じて転職を考えている方にファーストリテイリングについてお話すると、自分の今いる会社と同じ体質だと思っている方が多いです。

Y:たしかにそういう面もあると思います。われわれの会社も「大企業病」の部分はあると思います。私が、また社長として復帰してから、かなり、その大企業病をつぶしてきました。今からも徹底的にぶっつぶしていくつもりです。大企業病の会社は成長できない。
そんな会社では、優秀な人は仕事ができなくなってしまう。
優秀な人が、過去の経験にひきずられるのではなく、新しいことを受け入れて、自分のスタイル概念を変えて、いい会社、いいチームをつくろうと思えること。それが大事だと思っています。
年齢に関係なく若い人でも、自分の力を過信して個人技でやろうと錯覚する人が多いと思います。それが間違いの元だと思っています。
安定した会社なんて、存在しません。たしかに大会社は変えにくいと思います。
でも、どんな会社だって変えられる。僕がそう思っていれば変われると思っています。
そして、変えるということは、自分自身、僕自身が変わらないといけないと思っています。
一緒になって変わっていきたいと。

T:マスコミにも出ていたりしますが、ファーストリテイリングの幹部の定着が悪いというという見方もされていますね。それについては、どう思われていますか?

Y:仕方ないかなと思っています。そういう経験をして、今になってわかってきた。優秀な方々が入社してきて会社が変わると思ったが、変わらなかった。会社が悪いとか個人が悪いとかではなく、会社に合わなかったのではないでしょうか。
僕がその人の能力に惚れてしまって、会社に合うか合わないかということを考えてなかった。姿勢が違っていたのではないかと今になってみて思います。

T:私は、退職した方々の傾向を考えると、大きく二つあるのではと思っています。
一つは、もともと自分でやってみたい、柳井さんの元で勉強したい、そしてその後巣立って独立したり、別の会社で活躍したりという方々。そして、もう一つは、特に異業種から入社された方で、お客様に相対する経験のない方が経営に近いポジションで小売経験がない中で、予想外の小売の厳しさに直面して愕然としてしまった方々。この二つの傾向があるように思います。

Y:そうですね。まぁ、一番目の経営者として勉強したい人にとってはよかったのではと思います。
二番目の方々ですが、小売業の厳しさというよりは、成長する会社、本当に収益をあげている会社の実態を知らなかった、甘くみていたということではないかと思います。
お客様の要望に応えられないかぎり収益はあげられない。その厳しさを入る前に覚悟して入ってきてもらいたいと思います。
何度も言いますが、仕事はひとりではできない。周囲の人たちとどうやっていくかを考え実行しなければできないんだという考えが足りなかったのではないでしょうか。

T:退職した方々、卒業した方々からお話を聞くと、在籍当時は本当に厳しかったと言う方が多いです。でも、今だからわかるのは「優勝のための地道な練習が積めた」と感謝する人も多いですね。

Y:でもねぇ、もっと苦労しなきゃいけないでしょう(笑)。仕事は、複雑であり厳しいものです。そう簡単には優勝できないものだと思いますよ(笑)。

いいところも悪いところも全部自分で引き受けてあげる覚悟が上に立つ人間には必要だと思います

T:たしかにそうですね(笑)。柳井さん個人のお話になりますが、柳井さんの外からの見え方は、経営者として挑戦し続ける、限りない事業意欲、圧倒的な強さとよく表現されているように思いますが。

Y:そうですね。できることは全部やろうと思っています。
これは、僕の考えなのですが、みんな可能性をもっていると思います。それなのに、できないだろうと先入観で、あきらめる人が多すぎる。僕はここにくるまで、決して恵まれた環境ではなかったと思っています。「山口でファッション?」「紳士服をやっていてカジュアル?」と言われましたし。僕みたいなフワフワした人間が経営者をやれたんですから、若い人でしっかりした人なら、ちゃんと手順を踏んできっちりやればもっとできるはずです。

T:柳井さんの発信するメッセージから「血も涙もない」「冷血そうだ」だと誤解されている気もしています。

Y:誤解なんですよ。誤解なんですよというのは、ビジネスというのはそれだけ厳しくて、ビジネスのためなら血も涙も流しながらやらないといけないと思っています。
人のことや意見を無視しては決していません。ただ、現実をきちんと認めないといけない。ほとんどの人が現実を認めないと思います。ほどほどで済ますことが多い。ほどほどでは絶対に事業は成功しないと思います。

T:私は、柳井さんという方を人に説明するとき、「血の通った合理主義」「仕事には厳しい。人に対して甘くはないけど、あったかい。だから人がついてくる。」「何に対して厳しいかというと、自分の人生に対して中途半端なこと、失敗したことではなく挑戦しないことに厳しい。」とお話しています。
昔話になりますが、本部を山口から東京に移転するときに、それを機に退職の意思を表明していた幹部の方に、「これからも一緒にチャレンジしよう」という期待をこめた手紙を書いたり、入社直後で仕事に馴染めない女性社員のために休みも返上で、「どうすれば彼女の能力を活かせるか」を話し合ったりしたことを思い出します。
そういうところが、柳井さんの本質なのではと思っています。

Y:冷徹なイメージと誤解されているかもしれませんが、僕は、なんでもバサバサと全部自分で決めたりはしないんです。社長として、たしかに最後は決めます。
でも、聞くべきことは全部聞いています。それぞれの人の立場もわかっているつもりです。でも、経営者は決めなければならない。
それと、僕は、自分が頭がいいとは思っていません。僕より頭のいい人は社員にもたくさんいます。また、他の経営者の方にもたくさんいます。
でも、僕は頭のいい人だけでは商売はできないと思っています。チームをつくる能力がある人が必要だと思っています。経営者が「俺が俺が」では、いいチームはできない。
一人一人考えが違う。その調整が必要です。客観的にチームを見ることができる力。そういう力を自分は持っていると思っています。
最近特に思うのは、できる人というのは、仕事ができないと思う人に対して、全部否定します。実績を挙げることは、たしかに大事なことですが、実績が挙げられなかったとしても会社にとって必要な人はいる。
仕事ができる人は、仕事でしか人を評価しない。そういう人に人はついていかない。
全部を見て、評価をしてあげる。いいところも悪いところも全部、自分で引き受けてあげる覚悟が上に立つ人間には必要だと思います。
「人間集団」として存在するからには、それぞれの役割があり、それぞれを「必要な人」と思わないといけない。
それぞれが生きる道が、会社にあると思っています。

T:柳井さんの「人となり」を理解していただく、とても大事なお話ですね。
ちょっと余談かもしれませんが、柳井さんが、今まで、社員の方と接してきた中で、こんな嬉しい思いをしたというような具体的なことはありますか?

Y:具体的ではありませんが、僕は、いつも社員に無理難題ばかり言っています(笑)。でもね。それを「こうやりました」「うまくいきました」と報告受けるときが、何より嬉しい。なぜなら、挑戦したその人は、それをやり遂げたときに、それまでのその人ではなくなっているんですね。その姿を見るのが、本当に嬉しいです。
逆に、悲しかったこともあります。
昔、まだ小さな会社だったころ、12月31日の紅白歌合戦も始まってしまう時間まで働いてもらったにもかかわらず、利益が出ずにボーナスを払えなかった。そのとき一緒に働いていたスタッフに少しだけでもと思い1万円ずつ渡しました。そのとき、本当に心から悲しいと思いました。
こんなに働いてくれている社員にボーナスもあげられない。自分は経営者としては最低だと思いました。自分に能力がないからこうなったと思いました。その時、心の底から、経営者は絶対に儲けないといけないと強く思いました。

スピリッツには、FRの次世代を担うポテンシャル人材の採用を手伝ってほしい

T:ありがとうございます。最後に、柳井さんから弊社スピリッツに対して期待されていること、やってほしいことをお聞かせいただけますか?

Y:会社が成長する過程で、まず、専門の経験をもった経営者チームをつくりました。そして、次のステージでは、できあがった経営者の方々に入社してもらってチームをつくった。そういう経験を通してわかったことは、理想の経営者は育成できないかもしれないが、経営者の入り口までは、自分たちで、育てなければならない。育てなければ会社は成長しないということです。しかも大量に育成しないと成功しないと思っています。3年計画で、経営者の入り口まで育てたい。
そして、そこからは、実践で経営者になってもらう。そんな教育のための機関をつくりたいと思っています。その採用と人物の評価基準をつくりあげていくこと、そのためにスピリッツさんには、力を貸して欲しい。

T:ありがとうございます。これが本当に最後となりますが、柳井さん個人としての今後の夢というか理想を教えてもらえますか?

Y:僕の理想の生活は、月火、仕事して、水曜日ゴルフして、木金、仕事して、土日ゴルフしてが一番いいと思っています(笑)。しかもできたら、朝早く仕事をスタートして、午後3時くらいまでに終わって帰宅する。そんな生活がいいですねぇ(笑)。
会長の仕事をしたいですね。経営の執行は、育った経営者の人たちにそれぞれ任せて、週の何回かの会議で「文句を言う役割」になりたい(笑)。
それが、理想です。

日時:2008年11月12日(水)
形式:株式会社ファーストリテイリング  柳井社長・スピリッツ 社長 竹内 対談

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