チャレンジャーの軌跡

第15回「経営とは、先が見えないからこそ、何かを掴めるかもしれないというおもしろさや、夢がある。若いときに飛び込んでよかったと思っています」

2009/04/13

インタビュアー:河野 恵美

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プロフィール:山本恵司氏

1991年3月 東京大学工学部航空学科卒業。
1991年4月 三井物産株式会社入社。台湾駐在を含み、重機部にて製鉄プラントの貿易、ファイナンス業務および情報産業部にてパッケージソフトウェアの輸入・販売業務に携わる。
2001年1月 三井物産子会社に出向し、米国ソフトウェアの日本向け事業(“日本リクィジットセンター”)の新規立ち上げ・運営を行い、事業責任者を担う。
2004年8月 IT系ベンチャー企業の株式会社インフォーエスへ転職、取締役副社長としてベンチャー企業の再建に貢献。黒字化を達成。
2006年5月 株式会社リヴァンプ入社。アパレル・小売数社の事業再生業務に携わる。
2007年12月 クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社代表取締役社長就任。

「山本さんは経営がわかっていない。」と言われ、どうすればプロの経営者になれるのか?を
ずっと考え続けています

Q:まず、山本社長がクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン(以下:KKDJ)に入られる前までのご経歴をお聞かせいただけますか?

山本氏(以下Y):大学卒業後、大手商社に入社しました。大学時代にサークルでキャプテンを務めていたこともあり、社会人になっても将来的にはリーダーになりたいという思いがありましたが、いざ社会に出て日々の生活に追われていると、そんなふうに思っていたことなんてすっかり忘れてしまって。このままいけば順調に出世できるだろうと思いながら、十年間くらいサラリーマン生活を送っていました。

そんな時、実家の家業が厳しい状況になり、本当は何か協力したいのに、何もできない自分に気付きました。自分は経営のけの字もわかっていなかったと痛感し、商社にいたこの十年間は一体何だったんだろうと思いました。

本当にこのままでいいのだろうかと考えていたときに、社内転職制度で、IT事業の社内ベンチャーの立ち上げにチャレンジできるチャンスがあり、自ら手を挙げ、アメリカITベンダーの日本進出の責任者を務めることになりました。そこから4年間は、自分で人を採用することの怖さを始め、経営に関する様々なことを経験し、学んだと思います。商社に戻ることが決まったとき、一度経営を経験してしまうと、組織の中で一担当者からはじめるということがどうしても考えられず、また経営に携わりたいという思いから退職を決意しました。

その後、知人から紹介された大手放送事業会社での話に興味を持ち、その社長とお会いし、自分の経験や苦労話をお話ししたのですが、「山本さんはまだ経営がわかっていない」と言われ、内定を頂くことはできませんでした。自分としては、4年間“経営”をやってきたつもりだったので、『まだ何もわかっていなかったんだ』ということがすごくショックでしたね。

でも、全く関係ない人間にそういうふうに言い難い事を言っていただいたことは、すごくありがたいなと思いました。
そして、どうすればプロの経営者になれるのか?ということを考えるようになりました。今も悩んでいますが(笑)
その後、ある会社の副社長をさせて頂き、黒字化を達成させた後にリヴァンプと出会い、トップと話をしたその日に、いきなり当時の再生案件企業に連れて行かれて(笑)。直感で、ここでプロの経営者を目指そうと決意し、リヴァンプに入ることを決めました。入社後、数件の案件を担当した後、今に至ります。

 

「もし自分がお客様だったら」という視点を常にもっていたいと思います

Q:KKDJに入られてからも、チャレンジの連続だったかと思いますが、入られた当初はいかがでしたか?

Y:当時のKKDJで何が起こっていたかというと、新宿1号店を立ち上げてから10ヶ月ほどが経ち、とてもありがたいことですが、予定していた売上げの、何倍も上回る状態が続いていたために、すべての工程を走りながらつくり直さなくてはいけないという事態になっていました。

想定外の連続で社員は疲弊している、でもお客様は毎日行列をつくってまでいらして頂いている、更には有楽町店と川口店の新規オープンが控えている…一刻も早く社員の心のケアをし、今の状況に見合ったオペレーションをつくらないと、結果としてお客様に多大な迷惑を掛けてしまうと思いました。
まず2ヶ月かけて当時の社員一人一人と面談をし、具体的に何が問題になっているかを聞きました。でも、そういうことをしながら、どうすれば良いかが少しずつ見えてきました。

まずは、皆が同じ方向を向くことが大切だと思いました。試行錯誤を通じながらも、会社の目指す姿を社員全員に話しました。また、会社は良い方向に向かっているんだということを実感してもらうために、社員が一緒に手作りで、一周年パーティーなどの社内イベントやお取引先様向けのパーティなどを行いました。
こういった社員手作りのイベントなどを通じて、社員達のベクトルが、少しずつではありますが、揃ってきたような気がします。
一方で、ベンチャーであったが為に諸制度が整っていなかったのですが、こういった事を整備し、特にコスト管理は、売上げが上がっているときだからこそ、徹底的に進めました。

Q:KKDJで、はじめてB to Cご経験されたと思いますが、お客様と実際に向き合うというのも初めてのご経験ですか?

Y:そうです。なので、お客様の気持ちに近いということもあります。
一例ですが、私は店舗に入るとき、スタッフと同じ帽子を被るようにしています。お客様が並んでいらっしゃるのに、その列の横からお店に入っていってしまうと、中には違和感を感じる方もいらっしゃるのではないかと思うんです。帽子を被れば、社員だということがわかりますよね。「もし自分がお客様だったら」という視点を常にもっていたいと思っています。

Q:なるほど。そのように色々な試行錯誤をされている中で、今後のKKDJにとって、まだこういうところが足りない、こうしていきたいということはありますか?

Y:社員やクルー(アルバイトスタッフ)の皆がクリスピー・クリームで働いて、心の底から楽しい、幸せと感じてもらえるまで、改善・改善を続けていきたいと思います。永遠の課題でしょうが。と同時に、会社として必須となる利益についても、妥協無く追い続けなければならないと思っています。そう言う意味では、まだまだできていない事だらけです。

 

常に壁があって、やっているときは大変だけど、それを乗り越えていくことが好きなんです

Q:大学時代から志されていた「経営」を、今、実際にされてみて、いかがですか?

Y:経営は、知れば知るほど、やればやるほど、おもしろいけれど、永遠に解はないものだと感じています。
自分に限界を置かず、常にもっとできると思ってやっていかなければ会社も自分も成長しない。
昔は、MBAなどマネジメントの勉強すれば経営ができると思っていました。本やマネジメントスクールへの通学を通じて経営者としての考え方を勉強し、知識を詰め込んでいましたが、最近は経営者としての行動はどんどんシンプルになっていますね。“人と向き合う”ことや、“安易な妥協をしない”こと、“矛盾を突き進めていく”事など、担当者時代は適当に理由をつけて事なかれで進めていた事を、敢えて困難な道を選んで進んでいく。言葉に出すとすごくシンプルですが、とても難しいと日々感じています。

Q:意地悪な質問かもしれませんが、それなりの収入と昇進が約束されていた商社時代の方が、楽だったな、戻りたいなと思ったことはありますか?

Y:商社時代の同期には失礼かもしれませんが・・・楽だったとは思います(笑)。でも戻りたいと思ったことはありません。
商社時代に比べると、先は見えないかもしれないけど、何かを掴めるかもしれないというおもしろさや、夢があります。また、自分の成長が日時で分かる事も楽しいです。若いときに飛び込んでよかったと思っています。

Q:商社を辞めるとき、ご家族からの反対はありませんでしたか?

Y:妻には、「私は商社マンと結婚したんけどな…」と冗談ぽく言われました(笑)。
でも、悩んでいたときに最終的に背中を押してくれたのも妻でした。なんとかなるよって言ってくれた時は、すごく嬉しかったですね。
家族の理解と後押しがあったからこそ、今があると思っています。私にとって家庭と仕事は、どちらかだけに比重を置くものではなく、どちらもとても大切です。
仕事で楽しい経験をすればするほど、結果的に家庭にも良い影響があると思いますし、仕事がうまくいかずつらいと思っていたら、家庭にも悪い影響を与えてしまうのではないかと思うんです。家族も、私が生き生きしている方が嬉しいと思いますので、今の私を見て、あのときの選択は間違っていなかったと思ってもらえていると思います。

Q:山本社長の10年後は、どのようになっていらっしゃるイメージですか?

Y:クリスピー・クリームがより多くのお客様に愛され、より強靭な会社になっていたいし、それができる経営者になっていたいです。そして、今がセスナ機を操縦しているのだとしたら、10年後はジャンボジェット機を操縦できるくらいになっていたいと思います。そこに到達するまでは大変だとは思いますが。

Q:今、経営を志している方に、先輩として何かメッセージをお願いします。

Y:メッセージと言えるほどの大きな事は言えないのですが、経営だけでなくビジネスマンに通じる基本姿勢として、“他責”ではなく、“自責”を追求する事だと思っています。“今、目の前で起こっている事は自分の責任であり、自分に起因しているのだ”。他人は自分では変えられないけど、自分で自分は変えられる。”これができれば、素晴らしいビジネスマンであり、経営者になれると思います。私はまだまだですが(笑)。

Q:最後に、山本社長にとって、仕事とはなんですか?

Y:自己実現であり、自分の成長の場です。
人間は、思い通りにいかないことこそやりがいを感じるところってありますよね。仕事もそういう面があるような気がしています。常に壁があって、やっているときは大変だけど、それを乗り越えていくことが好きなんでしょうね。
例えば、明日から1ヶ月間仕事から離れるとなると、いても立ってもいられなくなるんじゃないかと思います。止まっていられないんです。“まぐろ”みたいですね(笑)。

日時:2009年3月4日(水)
形式:クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社 山本氏・スピリッツ 河野 対談

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