チャレンジャーの軌跡

第13回「先輩達からしていただいたことを自分の下の世代に返していくのが責任だと思っています」

2009/02/23

インタビュアー:河野 恵美

yuasa.jpg

プロフィール:湯浅智之氏

2000年東京大学工学部建築学科卒業。建築とマーケティングをW専攻し、人はどのような場所・物に熱狂するかなど、「感性工学」なるものに興味。

卒業後、アクセンチュアに入社。戦略グループに配属。主に製造流通業を中心に、経営抜本的改革、マーケティングプロセス、全社コスト削減、M&A、新規事業などを現場で経験。

2005年10月、リヴァンプの立ち上がりと共に転職。現在ロッテリアにて商品本部及び管理本部の執行役員として従事。32歳。

他人からいくら評価されても自分自身が満足していない時期が、不幸だと思います。

Q:湯浅さんが、大学を卒業されて就職された会社は外資経営系コンサルタント会社ですが、どのような理由で、その会社に入社を決めたのですか?

湯浅氏(以下Y):学生のときに体育会運動部の主将を務めていた関係で、就職活動時期は、組織を率いることとか、パフォーマンスをあげられる組織とはどういう人たちの集合体なのか、その中にいる自分はどういう役割を果たすのか、というところにとても興味を持っていました。また、実際にいろいろな会社の方とお会いする機会に恵まれ、その会社の先輩と接していると、みんな素晴らしい方々ばかりで、どこの会社に行っても面白そうだな、と思ったのも事実です。最終的には、自分と同世代の若い人たちがギラギラと働いているのを見たこと、及び当時は、外資系企業が業績好調の時代で、「コンサルタント、外資、かっこいいじゃん」と(笑)。極めて単純な思考で決めました。

Q:実際、入社されていかがでしたか?

Y:このコンサルタント会社には、5年間在籍しましたが、いろいろな刺激は受けました。一つはグローバルの自分の同世代を見れたこと、もう一つは多くの会社の意思決定の現場に携われたことです。4年目にマネージャーとなりました。

Q:それは、かなり早い昇進ですよね。

Y:そうですね。早かったと思います。私自身は、何もスキルがないのですが、上司やクライアントから可愛がってもらい、とても恵まれていたと思います。でも、決して楽しく仕事をしていたわけではありませんでした。

Q:早い昇進をし、認められていて、いい上司やクライアントに恵まれていたのに、楽しくなかった?

Y:他人からいくら評価されても自分自身が満足していない時期が、人間は一番不幸になるし、心が乱れる時期だと、僕は思っています。
コンサルタントの仕事というのは、クライアントに対し、経営指南をするみたいなイメージがありますが、実際は、仕組みを売るのが仕事です。経験もない若い人間が、いきなり企業の経営に入っていって、あれこれと指南できるわけがなくて。わかりやすい表現をすると「コスト削減します。」と言えなくて「コスト削減する仕組みをつくります。」としか言えないわけです。
学生時代から「魂が入っていない仕組みはくそくらえだ!」と言い切っていた自分が、自分のポリシーと反することをやっている。社会的には必要な仕事だとわかっていても、そのポリシーに反することが、どうしても耐えられませんでした。
コンサルタント時代は、素敵な大人に囲まれて、貴重な経験ができて、それは、今の仕事でも活きていて、重宝していますが、揉まれて成長したという感覚はあまりなかったです。

先人たちがつくってくれた、素晴らしいモノを、もう一度魂を入れ直して、つくり直すというプロセスが、とても好きです。

Q:そして、コンサルタント会社を退社し、リヴァンプに転職されたのですね。そして、ロッテリアの役員として再生に関わられる。なぜ、リヴァンプに?

Y:リヴァンプの経営の方とコンサルタント時代に出会い、その人の考え方に惹かれ、迷わず決断しました。私は、社会に出て、まだまだ若手の域ですが、仕事柄さまざまな方と出会う機会がありました。出会った方々の中で、その人の考えが一番ぶれていないと強く感じました。
その人は、従業員とか、取引先とか、会社に関わる仲間を大切にすることを第一に考える。愛情がある。そして、その愛情を、シンボリックなものに置きかえて、表現する。すごい人だなと思いました。外資系で成果主義というのは聞こえはよいけれども、若くして給料はたくさんもらっているけど、目は吊りあがっているし、部下にも優しくないし、元気がない大人が非常に多いと感じました。
例えば、外資系金融会社に入社して、3年目で何千万という年収をもらって「父親の年収を超えちゃったよ。」と自慢している若い人をみると、さびしいなと思うんです。自分は、それよりも、一緒に濃い経験をできる仲間が欲しいし、長くつきあうことをすごく求めています。

Q:そういう湯浅さんがリヴァンプに入社され、与えられた仕事は何ですか?

Y:はじめは、新生ロッテリア推進室の役員です。当時、まだ29歳になったばかりで、部下も2人でした。部署を横断的に見る、全体の改革の船を引っ張る役割です。現在は、商品本部と管理本部の役員です。

Q:リヴァンプに入社されて3年ですが、どんな経験をされていますか?

Y:若いことが特権と考えて、わからないことはわからないと言い、色々な人に色々なことを教えてもらっています。毎日発見があります。
この3年間は、会社を元気にすることとか、泥だらけの中で、物事をつくって動かすということはどういうことかを学びました。一人一人を筋肉質にしていって、水が漏れている箇所があれば、絆創膏を貼り、台風が吹いている中でも皆で進路をみつけ、あっちだと思って漕いだら、そこは外れ、でも成功を求めてひたすら漕ぎ続けるというイメージです。ラッキーだったことに、若い特権で、僕が一番、失敗を恐れずにバットを振りやすい環境にいたので、一生懸命やれました。一生懸命やったら、ついてきてくれる内部の心ある社員が出てきて。そして、そこに外部から力のある人が、入社されて仲間になって、少しずつ船が動くようになってきたという感じです。
先人たちがつくってくれた、素晴らしいモノに、もう一度魂を入れ直して、つくり直すというプロセスが私はとても好きです。ゼロから作り上げるというプロセスもおもしろいし、別のパワーが必要だと思うのですが、既存のものを元気にするというプロセスに現時点では興味があります。

「お客様に伝える前に、まずは身内の襟を正せ。」という言葉を大切にしています。

Q:湯浅さんの本気が伝わったから、一緒にやってみようと思う方がジワジワと増えてきて、改革の大きな波になったと思うのですが、そういう波が起こる前にハレーションは起きなかったのですか?

Y:ハレーションの連続でした(笑)。業界のことをわかっていないのに、とか、うちの歴史もわかっていないのにとか、色々言われました。それは、全部自分の至らなさなのでしょうがないなと。でも、私が、唯一心がけたことは、誰かのふんどしを担いで発言することは絶対にやらないということでした。「僕は、これが正しいと思うけど、どう思いますか?」というコミュニケーションを全社員ととるようにしました。そうすると、価値軸が揃ってくるような感覚がありました。一緒に飲みに行き、本音で語って、喧嘩もして、ということをひとりひとりとやるようなイメージです。そのうちに、1人が3人になり、3人が5人になり、5人が10人になり、一気に会社が改革のために動き出したような気がします。

Q:湯浅さんの表情を見ていると、楽しくてしょうがない、充実しているという感じがしますね。

Y:そうですね。充実しています。悩みもありますが、悩みの質が、以前とは全く変わりました。
この3年間は、従業員をどのようにして健全な方向に持っていくかということ、それからロッテリアを支えてくださるお取引様とどのように健全な関係を築き直すか、ということの繰り返しでした。
「絶品チーズバーガー」が良い例で、取引先、PRチーム、従業員、皆が同じベクトルを向いて、本気になったんです。今回発売した「産直まるごとポテト」も同じくです。従業員が本気になり、ロッテリアの姿勢を支持してくださる取引先と契約しました。今まで、業界は、コスト競争ばかりしてきたわけです。規模を大きくし、価格を下げ、規格を制限する。そういう戦い方をしていたら、私たちは、大手の競合には勝てないし、むしろそこで勝負をしようと考えていません。一つ一つの商品を丁寧に作りあげて、消費者に伝える前に、まずは従業員と徹底的に向き合う。食べ物を扱っている商売なので、従業員がその友人や家族に対して、「俺の店美味しいから食べにおいでよ」と言えるまで、従業員が商品を信じられることを重要視しました。その後、消費者の方に対して、わかりやすくメッセージを出し、支持していただく。「お客様に伝える前に、まずは身内の襟を正せ。」ということです。
それを実現するには、従業員が元気なこと。これが一番大事だと思って活動しています。

Q:仕事人・湯浅さんとして、今後はどういう方向に進んで行きたいと考えていますか?

Y:今は先のことを考える余裕は全くありません。36年継続してきたロッテリアという企業が、少しでも長く継続するために何をすべきか、ということだけを考えています。私は、長期的な夢をもって動くタイプではなくて、今現時点のフィールドで一生懸命やることが重要だと思って活動するタイプです。全ては、プロジェクトだと捉えています。
学生時代のボート部のキャプテンの時も、プロジェクトですし、現在のロッテリアの仕事もプロジェクトです。私の中のベースにあるものは、すごくシンプルで、大儀ある目標と、それに集う仲間とわいわいやりながら達成していくこと。これを連続してやっていくこと。
もし、自分に大儀を成功に導く能力があるのであれば、千人とか一万人とかの大きな規模で社会貢献できるようなプロジェクトを、いずれやってみたいという欲はあります。
そして、私は、昔から色々な方々に助けていただきながら生きています。親と同じような思いでご指導してくださる先輩達がいて、私は恵まれていました。それと同じことを、自分の下の世代に返していくのが責任だと思っています。

日時:2009年1月21日(水)
形式:株式会社ロッテリア 湯浅氏・スピリッツ 河野 対談

株式会社スピリッツは、20代・30代で転職、海外で仕事をしたい方を支援致します。

月別アーカイブ

2009/04
2009/03
2009/02
2009/01
2008/12
2008/11
2008/10
2008/09
2008/08
2008/07