チャレンジャーの軌跡

第12回「12年かけて"銀行"という組織で学んだこと」(後編)

2009/01/29

インタビュアー:有政 雄一

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そのうち、銀行本体の雲行きも怪しくなった。
担当していたリゾート案件も早急に売却しなければならなかった。弁護士との打ち合わせ、裁判所や債権者との協議、売却先の選定、売却スキームの考案、記者会見の設定…。やることは山ほどあったが、それらをひとつひとつ潰していった。

何度も考え、相談し、また練り直す。細かい業務も多く、一つのミスが命取りになる、胃の痛い日が続いた。モチベーションを支えたのはそこで働いていた従業員の顔。存続させる道を必死で探った。時には銀行側とぶつかる場面もあったが、結果的に、まだまだ可能性に満ちたリゾート案件をまったく新しいスポンサーのもとに移管することができた。

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このリゾート案件の処理で培った経験を生かして、彼が次に取り組んだのが、企業の合併・買収(M&A)業務だった。なかでも多く手がけたのが、客足の落ちたゴルフ場やホテル、それに旅館だった。こうした案件を扱う場合、ひとつの物件を右から左に流す、ただの“仲介屋”なら何社もある。しかし、彼の場合は違った。

何10万坪もあるゴルフ場の場合、地権関係が複雑で、それこそ所有者が何100にものぼることもある。それらを丁寧にほぐし、新しい資本を入れ、サービスを一新、みごと再生へと導く。いまや銀行本体にではなく、“彼個人にお願いしたい”という趣旨でいくつかの案件が持ち込まれるようになっていた。

そして彼は、12年あまり在籍した銀行を退社した。もともと10年で辞めるつもりだったので未練はまったくなかった。社内でいつも、「自分が辞めた後のことを考えて仕事をしろ」と後輩に口酸っぱく言い続けてきたが、「まさか言った本人が本当に有言実行するとは思わなかった」と周囲が口々に話したという。

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「誰もが、儲からないと思っている。でも、みんなが駄目だ、駄目だというときは、価格は暴落しているわけですから、“買い”の時期なんです」。

退社後ほどなく、彼はゴルフ場の売買と再生を手がける会社を立ち上げ、代表取締役になった。持ち込み案件は引きも切らない。

「多くの日本のゴルフ場は、普通の人が日常、気軽にプレーできる環境と料金設定になっていません。“市場を無視したものは必ず是正される”というのは私の信念。新しい挑戦を続けるつもりです」。

リスクを取らない組織の代表格、銀行に別れを告げ、日々、リスクと向き合う道を選択した彼。人を見抜き、常識を疑う。危機を回避させ、資産価値を正当に評価する。

リスクを極力、回避してきた組織で、彼が最も学んだのは、「リスクとは何か」ということだったかもしれない。

 

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