チャレンジャーの軌跡

第9回「"生きる"とは、森羅万象を味わい尽くす旅のことだ」(後編)

2008/12/01

インタビュアー:有政 雄一

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田沢氏が次にどんなビジネスに取り組むのか、その時点では明確ではなかったようだ。そして、彼が選択したのは、1ヵ月間、パソコン教室運営会社を休職することだった。「田沢さんについて色々な人に会ったり、小売店舗の見学に出かけたりしました。そうすると、“この店はどこが悪くて、それをどう直せばもっと売上げが伸びるか分かるか”などと訊いてくる、そして彼が実地でやってきた現場での事例を一つ一つ語ってくれるのです。ますます、一緒に働きたい気持ちが高まりました」。

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1ヵ月がたって復職し、再びパソコン教室会社の経営企画の仕事に戻ったのだが、ある日、田沢氏から「飲食関係のビジネスを考えている」という連絡が来た。彼の行動はこの時もすばやく、しかも常人の発想を超えていた。なんと翌日から、もはやほとんど残されていないはずの空き時間をなんとか捻出し、スポット的ながら、自宅近くのマクドナルドで時給830円のバイトをはじめたのである。「飲食ビジネスといってもピンと来なかったので、とりあえず、外食産業ナンバー1のマックでバイトして、学べるものは学んでやろうと思ったのです。後日、田沢さんに会う機会があって、“どうしてる?”と聞かれたので、“マックでバイトしてます”と答えたら、彼も凍っていましたけどね(笑)」。
自分より10歳も年下の大学生に頭を下げ、教えを請う毎日。プライドを傷つけられるような面白くないこともあったはずだが、そんな素振りを微塵も見せないところがこの人の凄さかもしれない。「高校生のアルバイトをマネジメントする大変さがわかりましたね。彼らはお金を稼ぐことに切実ではないのですぐ欠勤してしまうのです。もうひとつは、作業の定型化・マニュアル化が極限まで進み、それによって、当時ハンバーガー1個65円という低価格が実現できているという仕組みを肌で学べたことですね」。

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「飲食ビジネス!だったらマックでバイトだ」という行動力。外交官になることを決意した中学2年のときも、銀行に面接に行ったときも、存分に発揮された瞬発的行動力だ。猪突猛進と揶揄する人もいるかもしれない。しかし、目標を見つけたら躊躇なく肉迫する。この行動特性が、彼の最大の強みとなってきたのは確かなのだ。
結果として、田沢氏は飲食ビジネスに進まなかった。その替わり、まったく新しい業態の企業を立ち上げ、現在、彼はそこの社員として多忙な毎日を送っている。年末にこの話が来て、正月休み明け早々、パソコン教室運営会社の社長にこれまでの経緯を話し、退社したい旨を告げたら、「2度とないチャンスだから頑張って来い」と快く送り出してくれた。スポーツマネジメント会社の仕事も現在は休止。気合と根性で全力投球の日々を送っている。

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ここまで見てきたように、彼のキャリアは、決して落ち込むことがない、いつでも前を向く力によって支えられてきた。その駆動力はどこに由来しているのだろうか。彼はいう。「ひとつは、自分が死ぬまでに、どれだけ多くの経験 ― 見たり、聞いたり、知ったり、出会ったり - を積めるかに挑戦したいという気持ちが非常に強いのです。そう考えると何をやっても一瞬一瞬が自分の挑戦にかなう。そうした色々なことを経験できる手段が、「経営」だと思う。「経営」の中には、僕がまだ知らない事柄がたくさん詰まっている気がする。だから、僕は「経営」を一生の仕事にしたいと考えています。もうひとつは、『すべての物事はつながっている』という考え方です。田沢さんに会えたのも大学時代に打ち込んだアメフトが縁になっているし、そのアメフトも外交官になりたいと思って一橋に行かなかったら出会わなかったでしょう。
ちょっと大げさですが『世の中森羅万象を知りたい、体験したい』という欲求と、『物事すべてはつながっている』という考え。このふたつを結びつけると、自然に僕のような生き方になるのです」。
一度描いた夢を諦めず、何度、失敗しても挑戦する生き方はすばらしい。でも、目の前の課題に真正面から向き合い、その過程で次の新しい夢をつかんでいく生き方もまた素敵なのだ。

 

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