チャレンジャーの軌跡

第2回「選択!〜キャリアプランと現実の狭間で」

2008/07/11

インタビュアー:有政 雄一

vol02-01

「失礼します!」元気な声がオフィスに響いた。年齢は30歳。人懐っこくて先天的な明るさを感じる、そんな第一印象だった。

大手住宅設備メーカーで、未開の地・中国市場のマーケット開拓というミッションを背負い、年上の現地社員をまとめながら代理店を開発・大型の商談には自ら足を運び受注に結び付けていく、そんな仕事を5年ほど続けていた。折角受注に結び付けても、工場からなかなか商品を廻してもらえない、また商習慣や労働感覚の違う異国の地で、慣れない調整役も引き受けながらまさに孤軍奮闘。その努力の甲斐あって大きな実績も残すことができた。会社からも将来を嘱望され、支社の責任者を任せる話も来ていたらしい。

が、彼は突然その会社を辞め、単身アメリカへ留学してしまう...。

vol02-02

そんな彼に会ったのは、アメリカから帰国してすぐの頃だった。
「40歳を過ぎたら自分で事業をやりたいと思っているのですが、それまでの10年間をその会社で過ごすイメージがどうしても湧かなかった。今後10年のキャリアプランをどうするか、ファイナンスやITの勉強が必要だし今のうちに英語もブラッシュアップしておきたい、勉強できるのは今の時期しかないのではないか...。そんなことを考えていたら、いてもたってもいられなくなり会社を飛び出してしまいました。」

では、これからどうするのか?
「中国でのビジネス経験がほとんどなので、できれば日本でのビジネス経験を積んでおきたい。経営者と近い場所で仕事がしたい、若くても力次第で事業運営全般を任せてくれる社風、中国向けのビジネスを展開しているところ、できればコンシューマ製品が良い、仕事のスケールから考えると東京での仕事が良さそうだが、郷里で同様の仕事があればそれに越したことは無い......、以下略」

彼の希望は多岐にわたった。
話しぶりから、彼の本気さが伝わってくる。不安なんて微塵も感じていない。
おそらくどんな困難があっても、彼なら笑いながら越えていくのだろう。失敗したら舌をペロッと出して「やっちゃいました」なんて言うのだろうなー、と思いながら彼の話を聞いていた。

vol02-03

ちょっと雑談

キャリアプランというと思わず身構えてしまうような言葉だが、基本は自分の気持ちに素直になること。
「自分の目標に近づく為の行動計画」もしくは「自分の最も心地よい環境を得るための目論見書」であり、風潮に流されて、世の中的に格好の良い姿になろうとするのは落とし穴がつきものである。
(冗談のように聞こえるかもしれませんが、結構多いような気がします)

キャリアプラン=キャリアアップ計画→スキル・知識・ポジション・給与のアップという図式がイメージしやすいが、キャリアとは仕事・家庭・学習・趣味などを全て包含した言葉であり、その時々に応じて何を重視してプランを考えるかはその人の状況次第。
それと、目標から"逆算式"でキャリアプランを考えていくことが多いが、この時のポイントは目標と現状のギャップ・実現可能性を客観的に把握しておくこと。そのアドバイザーとしてキャリアカウンセラーやベンチマークにしたい人をうまく活用するのも一つの手である。

また、現状から一歩踏み出す"積み上げ式"で考えるのも有効。遠くの目標を無理して考えるよりは、まず身近な目標を立て、それをステップにまた次を考えていく方が実現性が高いとも言える。この時のポイントは「今の仕事の自分的意味・今の職場でできること」を様々な角度からまずは考えてみること。どうしても業務にはまり込んでいると、一歩引いて自分の仕事を考えることが難しい。客観的に自分の仕事・職場環境をじっくり考えることで次に進みたい道・やりたい仕事・すべき事が見えてくる。(かもしれない?)
いずれにしても、キャリアプランは眉間にしわを寄せながら考えるものではない。自分自身の未来設計図であり、考えるプロセス自体や未来の自分像を楽しむ余裕を持ちたい。

vol02-04

さすが元営業マン。東京にウィークリーマンションを借り、数多の人材エージェントにアポイントを取り付け、猛然と就職活動を開始した。

次の職場に対する思いは色々あったが、面接に行ってみないと実際のところは分からない。エージェントに自分の希望をきっちりと伝え、紹介された会社は「まずは話を聞いてみる」というスタンスで応募していった。目下の最大の利点は"時間がある"こと。現職中の就職活動ではなかなかこうはいかない。紆余曲折あったようだが、結果的に2つの会社が就職先候補に残った。

1つは大手自動車メーカーの中国事業スタッフ。近い将来の管理職候補として迎えたいという話。もう1つは地元技術系ベンチャー企業。環境ビジネスで成長中の会社で、東京での営業担当兼大手商社とのジョイントベンチャーの立上げの後、中国事業の責任者として考えているという話であった。給与額もほぼ同等、異業界からの応募ということを考えれば、この就職難の中でそれなりの会社から複数の内定が取れただけでも特筆すべきかもしれない。

さあ、ここで悩んだ。どちらが自分のキャリアプランとして最適か。双方から熱心に誘ってもらっているし、それぞれによい点がある。内定後も何度かその会社に足を運び、気にかかっている点を解消していった。会社の安定感やビジネスの影響力、希望のコンシューマー製品という意味では前者に完全に軍配が上がる。経営者と近い位置で仕事ができ、事業運営・将来的な独立を考えた場合は後者の方が勉強できる領域は広そうだ...。

そのような中、再度彼から相談を受けた。もしかしたら既に腹は決まっていたのかもしれない。自分自身で言い聞かせるように話す姿は、自分の考えを整理し自身の判断の確からしさを確認している、そんな感じであった。おそらく彼は無意識だったと思うが「この決断を親がどう思うか...」とボソッといった言葉が印象的だった。その後ニコッと笑って「でも本当に期待・納得できる環境って、今現在ではこっちですね」

意思決定のぎりぎりの段階で、その人が本当に大事にしているものが見えてくる。それは人それぞれ、色々あっていい。40歳の自分像に近づく為に今何が必要なのか、育ててくれた両親に顔向けできない生き方はしたくない、できれば自慢の息子であり続けたい。おそらく彼はそんなことを意識の根底に置きながら、今後も貪欲にチャンスを掴んでいくのだろう。

現在彼は東京で、慣れない環境ビジネスを相手に悪戦苦闘の日々であるが、持ち前の明るさを発揮して乗り越えていきそうである。彼が立てた10年間のキャリアプラン、おそらく現実とのギャップに苦しむことも多いと思うが、今の環境を最大限利用しながら、是非一つ一つ実現していって欲しいと思う。

10年後の彼の姿が、今から楽しみである。

株式会社スピリッツは、20代・30代で転職、海外で仕事をしたい方を支援致します。

月別アーカイブ

2009/04
2009/03
2009/02
2009/01
2008/12
2008/11
2008/10
2008/09
2008/08
2008/07