経営者インタビュー詳細

株式会社ニトリ
代表取締役社長 似鳥昭雄
vol.01

http://www.nitori.co.jp/

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北海学園大学卒業後、
1967年 似鳥家具店を札幌で創業。
1972年 似鳥家具卸センター株式会社(現株式会社ニトリ)設立。
1978年 代表取締役社長就任(現任)。
1986年 株式会社ニトリに社名変更。
1993年 本州進出。茨城県ひたちなか市に本州一号店をオープン。
2005年 秋の栄典で藍綬褒章を受章。
2007年 台湾・高雄に海外初出店。

 

まだまだ我が社は伸びますよ。お客様に喜んでもらうために、やることがたくさんありますから

問題を発見し、観察・分析・判断をし、数字や状態も変革をしようということが今年のスローガンです

竹内(以下T):初めて似鳥さんとお会いしたのは、2年前になります。おつきあいが始まって、中国の出張やアメリカの社員研修にも同行させていただきました。様々な経験の中で、似鳥さんと社員の方々との関係を拝見し、自由に権限を与え、仕事を任せていらっしゃるなという印象を強く受けました。

似鳥社長(以下N):そうですね。任せていると思います。

T:オーナー経営者の方は、どうしても全部自分でやりたがってしまう、やってしまう傾向にあると思います。なぜ、似鳥さんは社員の方々に権限移譲をされるようになったのでしょうか?

N:私は、自分に自信がないからです。私よりも、部下の方ができるだろうと思っているから任せます。
事業を始めた頃は、何でもかんでも自分でやっていました。会社が大きくなるにつれ、やることが増え、できないことが当然出てきますよね。できないと、もっと先、未来のことが見えなくなる。それではまずいので、部下に任せてやってもらおうと考えたわけです。自分は常に未来のことを考え、ロマンとビジョンを持ち、それを達成することが最も大切な任務なので、そのために部下にどんどん任せてやってもらうようにしています。
大事だと思っているのは、会社の進む方向が全て合っているか?ということ。
時々間違った方向に行ってしまったり、軌道を外れたりすることもありますが、その時は正します。
人は、責任を与えないと責任を取らないものです。全て私が判断すると、責任を取ることが経験できません。ですから必ず、部下から起案をさせます。そして、もし失敗したら本人が責任を取る。これが大事です。
いつも私は、「観察・分析・判断」と繰り返し言っています。問題になった場合、「原因を推測し、それが正しいか現場に行って確かめる、事実を確認する」という行動が足りないんです。
机上論でやってしまうんですね。その結果、間違った回答があがってきます。
確かに私は、部下に任せますが、「観察・分析・判断」ということができていなければ、厳しく追及しますし、何回でもやり直しさせます。書類を持ってきて、「どうしますか?」というのはダメだと思っています。観察・分析・判断をして持ってくるように言います。現場で起案すること、問題を発見することが大事です。現場に行っても、経験するだけでなく、そこから何が問題かということを発見し、なぜそうなったのか分析し、すぐ対策を打つこと。問題の発見ができない人は、なかなか成長ができないですね。

T:中国の出張に同行させていただいた時、似鳥さんとバイヤーの方、また似鳥さんと社員の方とのやりとりを聞いていて、ずいぶん細かいところまで、質問をされているなという印象を受けました。

N:先程もお話したように、常に問題を見つけること。それを部下に教えているわけです。質問をせずに、わかったつもりで仕事を進めると失敗することが多いんです。なぜ、売れているのか?売れていないのか?そういう質問をしない、問題を問いたださない場合が多い。自ら、それを部下の前でやってみて、同じようにやらせる。それが大事だと思っています。そして、これは教育の場だと思ってやっています。本人たちの気が付かないことを発見して指摘することが、上司の役目だと思うんです。本人が知っていることは言ってもしょうがないので言いませんが、知らないことはすごく細かいことでも教えます。

どうすれば、社員が育つか、どういう技術が社員に必要かということを大前提に評価基準を考えています

T:社員を育成するという姿勢を創業からずっとやり続けていらっしゃいますが、「観察・分析・判断」ができる社員の方は増えてきていらっしゃいますか?

N:増えています。さらに問題を発見し、観察・分析・判断をし、その上で数字や状態も変革をしようということを今年のスローガンにしています。物事がなかなか進まない時は、大抵、そこが足りないことが多いです。今年は、そこを徹底的に社員に植えつけようと思っています。これは、演繹法で、30代から一生を終えるまでの社員にとって大事な技術となるはずです。20代は、問題になったあらゆることに対して、どう手を打ったかという事例を学ぶ帰納法を教え込みます。ハーバード大学などは、学生にどんどん訓練させていて、社会に出てからすぐに役立つことを学ばせますが、日本の学校では、なかなかそういう訓練はされていないですよね。実際、社会に出てから大事なことは、ロマンとビジョンを持つことだけでなく、問題を見つけて、変革していくところにあると思っています。

T:ニトリという会社は、社外の人から見ると、大企業に見えていると思います。また、オーナーのリーダーシップが強い会社とも見えていると思います。そこに飛び込んで、本当に変革やチャレンジをさせてくれる会社なのだろうかと思っている人が多いと思いますが、実際は、変革、チャレンジができる人に入社して欲しいということですよね?

N:その通りです。事業は、出来上がった壁を壊し、そしてまた新しい壁を創り、再構築していくことが必要です。同じやり方を継続するからダメになるんです。人・モノ・金・仕組み・システム、それらのやり方を変えて、新しいものを産み出していく必要があります。
ニトリは今年200店舗になり、300店舗を達成します。世界出店を推進していき、やり方をどんどん変える時にきています。ですから、先程もお話しましたように、2009年度のスローガンとして、「現状否定し、観察・分析・判断で、数字と状態を変革しよう」ということを掲げました。
それから、コントロール能力も大切だと思っています。低い目標計画を立て「120%達成しました!」と喜んだりしますが、前後の誤差は5%以内でないと。低い目標を立て、高い達成率を上げても評価しません。願望と実績が一致できるコントロール能力が高ければ評価します。

T:上司に評価してもらおうと思うと、ついつい低い目標設定をしがちですよね。お客様に評価してもらおうと思えば目標は高くなると思うのですが。

N:そうですね。社員は評価で動きますので、どうすれば社員が育つか、どういう技術が社員に必要か、ということを大前提に評価基準を考えています。
また、以前から継続して「作る・売る立場でなく、使う・買う立場で考え行動しよう」、「欠品・コストを削減し、品質向上を実現しよう」ということをスローガンに掲げています。一番大事なことは、お客様にとって商品があることです。
そのために今、我が社に足りないことは、現状否定し、変革していくことです。

T:社長の危機感は、ニトリは現在、大企業病になっているということでしょうか?

N:そうですね。大企業病だと思います。今年を入れて、22期連続増収増益ですが、これで安心・油断・傲慢などが社員に出てくることが一番のリスクだと思っています。今であれば会社は変えることができます。
かつて日本一だった企業は、必ず衰退しています。我が社もその可能性は十分にあり、油断をしたら、必ず抜かれると思っています。社員に技術を習得してもらい、それを仕事に活かしてもらえば、結果として数字は良くなります。
でも、売上と利益をあげることだけを要望してもダメで、物の見方・考え方・具体的な技術を身に付けてもらうことが必要です。
できあがった会社にするのではなく、今までのやり方を一掃するつもりで変えていきます。

お客様にとって」という意識が一番大事で、それ以外は事業にとって「敵」だと思います

T:似鳥さんとおつきあいが深まるにつれて、似鳥さんが経営者として、常に本質を見抜き、独自性を大事にし、そのためにはリスクも回避せずという姿勢の方だなぁと感じています。

N:私にとって、本質・原点とは何かというと、やはりお客様です。「お客様にとって」という言葉が、社内で、社員同士で、もっと討論されなければいけないと思うのですが、残念ながらまだまだ足りないですね。「自分にとって」「自分の部署にとって」「会社にとって」という立場でやっている人が多い。「お客様にとって」という意識が一番大事で、それ以外は事業にとって「敵」だと思います。
私は、利益が上がらないときも、常にお客様のためにという思いでやってきました。そういう考えの人を社員にたくさんつくることが必要だと思っています。

T:似鳥さんのお人柄は、正直で公平。相手がどういう立場の方であっても、性別も国籍も問わず、同じようにおつきあいしていらっしゃいます。その反対に、表面的な人や嘘をつく人、評論家のような人は、受け付けない方だなと。マスコミなどを通して似鳥さんを拝見すると、見方によっては、コワモテに見える場合もあるようですが、実際の似鳥さんは、大変失礼ですが、かわいらしく(笑)、心が若々しく、好奇心があって、人を喜ばせたり、驚かせたりすることが大好きなチャーミングな方ですよね。

N:昔から、正義感が強い子供でした。すごく貧しくて、自分自身が虐げられて育ちましたので、その辛さは骨身に染みています。ですから、職業や収入や人種も関係なく、もちろん老若男女問わず、誰に対しても同じように接するようにしています。
それに、子供のころから周りを笑わせるのが大好き、というか趣味でした。授業中も先生の話を聞かず、どうやったら笑いが取れるか、そればかり考えていました(笑)。一瞬のウケを狙うのが快感で、授業をめちゃめちゃにしたりしていました(笑)。これは、今でも変わっていません。人が楽しんで笑ってくれることは何でも身につけたい。物まねでも、手品でも(笑)。そういう「人に喜んでもらいたい」という気持ちが今の事業にも繋がっていると思います。

人に対しては、時間もお金も投資していこうと考えています

T:人に喜んでもらいたいという似鳥さんが描く、今後の事業戦略、特に商品戦略について具体的にお話いただけますか?

N:私は、36、7年前に渡米して、その時に見たものが今でも忘れられないのです。ホームファ二シング商品の価格が、日本価格の3分の1でした。ですから、日本でも価格を3分の1にしようと目標を立てました。今は、2分の1までになったので、商品価格の面では、点数をつけると70点くらいかなと思っています。あと3割下げられれば、100点です。品質機能の面では60点。ようやく「可」になってきたところです。
品質はよくなってきましたが、機能の面では、まだまだだと思っています。機能性をどんどん追求し、新しいものを開発していき100点に近づけたい。そして、最後にトータルコーディネーションの面。アメリカのトータルコーディネーションは、素晴らしいと思いますが、我が社の現状は50点で「不可」です。今年からこのトータルコーディネートに力を入れていきます。リビング・ダイニング・寝室・バス・トイレ。現状では、どこかでコーディネートが途切れてしまいますが、全部の部屋を繋げられるようなことを考えています。3ヶ月に一度、1シリーズ発売していく予定です。これができればかなり画期的なことだと思います。
低価格であるのはもちろんのことですが、品質・機能、そしてトータルコーディネートも充実させていきます。まだまだ我が社は伸びますよ。お客様に喜んでもらうために、やることがたくさんありますから。人間の生活の優先順位は、食・住・衣です。その中でも、「住」が一番遅れていると思いますので。
また、海外出店も視野に入れています。そのためには、人材の質と量を蓄えておかないといけません。

T:最後に、似鳥さんが事業を始められて、今日までの社員との交流の中で、嬉しかったこと、反対に悲しかったことを教えていただけますか?

N:嬉しかったことは、社員が困難を乗り越えて、仕事が成功し、嬉しいと心から言ったときの顔を見ることです。社員が成長している過程を見ることは本当に嬉しいし、財産です。人・モノ・金の中で、モノと金はなくなりますが、人はなくなりません。人に対しては、時間もお金も投資していこうと考えています。社員のモチベーションが高いということは、自己成長を味わっているということなので。
悲しかったことは、あまりないんですけど(笑)、やっぱり、社員が退職してしまったときですね。本当にがっくりきます。退職した人が、別の会社を経験し、ロマンとビジョンがある会社はニトリだけだったと言って戻ってくることもありますが。でも、別れはつらいですよね。
最初は、ロマンとビジョンを共有してきたはずだったのが、途中でうまくいかなくなるというのは、お互いが努力して、相性を良くしていかなかったということだと思います。片方だけが努力してもだめで、お互いが合わせていこうと努力しないとうまくいかないですよね。相手に求めてばかりではなく、まず、自分から相性がよくなるように歩み寄る。これは、どんな人間関係でも大切なことだと思っています。

日時:2009年2月5日(木)
形式:株式会社ニトリ 似鳥社長・スピリッツ 社長 竹内 対談

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